バリ島を訪れるなら、ぜひ足を運んでほしいのがデンパサール中心部にある「ジャガッナタ寺院」。華やかな観光スポットとは一線を画し、静かな時間が流れるこの寺院では、バリ・ヒンドゥーの精神文化を肌で感じることができます。
バリ島の人々の信仰が息づく神聖な場所でありながら、観光客にも開かれているため、バリの深層を知りたい方にはぴったりのスポットです。隣接する緑豊かな広場も散策におすすめです。
ジャガッナタ寺院とは

デンパサール市の中心に位置するジャガッナタ寺院は、バリ・ヒンドゥー教における重要な宗教施設の一つです。創建は1953年と比較的新しいものの、現地の人々の厚い信仰を集めています。
寺院の特徴は、バリで唯一、宇宙の創造神であるサンヒャンウディ神を祀っている点にあります。観光客でも気軽に見学でき、神秘的な建築様式や繊細な彫刻が魅力な観光スポットです。


最高神サンヒャンウディ神
ジャガッナタ寺院が特別視される理由のひとつが、バリ・ヒンドゥー教における最高神「サンヒャンウディ神」を祀っていることです。多くの寺院では特定の神々や祖霊を祀りますが、サンヒャンウディ神は宇宙の創造者とされ、全ての存在の源と信じられています。
寺院中央にはその神を象徴する巨大な石塔「パドマ」がそびえ立ち、訪れる者を圧倒します。祈りの時間には、白い衣装をまとった現地の信者たちが捧げ物を手に集まり、神聖な雰囲気が境内に満ちる光景は、訪れる者の心に深い印象を残します。
ププタン広場
ジャガッナタ寺院に隣接する「ププタン広場」は、バリ島の人々の憩いの場であり、バリ島の歴史を語るうえで欠かせないスポットです。1906年にオランダ軍との戦いで起きた集団自決「ププタン」が、この地名の由来となっています。広場の中央には、その英雄的行為を讃える銅像が建てられており、現在では平和を象徴する場所として親しまれています。
芝生が広がる園内では、夕方になると子どもたちが遊び、大人たちは読書や談笑を楽しんでいます。観光の合間に立ち寄って、バリ島の日常に触れてみるのも旅の醍醐味です。
ジャガッナタ寺院の見どころ

ジャガッナタ寺院には、バリ・ヒンドゥー独自の建築美や精神性を映し出す見どころが数多くあります。特に境内にそびえる塔や複雑な石塔造り、そして守護の意味を持つ鬼神像は訪れる人々を魅了します。神聖さと芸術性が融合した空間を、ぜひじっくりと歩いてみてください。
境内の塔
ジャガッナタ寺院の中心に建てられている塔は、神聖な宇宙観を体現する象徴的な存在です。この塔は「メル」と呼ばれ、多層に重ねられた茅葺き屋根が特徴で、屋根の段数は祀られている神の位階に応じて決まります。ここでは宇宙創造神・サンヒャンウディ神にちなみ、11層の屋根を持つ特別な塔が建てられています。
黒い茅で覆われたその姿は、青空に映えて荘厳さを際立たせています。塔の前では祈りを捧げる現地の人々の姿が見られ、信仰の深さを感じ取ることができます。
石塔造り
寺院のもう一つの見どころは、敷地内に点在する精巧な石塔です。これらの塔は火山岩や石灰岩を用いて造られており、複雑な装飾や神話をモチーフにした彫刻が施されています。特に目を引くのは、バリ島の叙事詩「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」に登場する神々や英雄たちが描かれている点です。
時間と共に苔むした石塔は、長い歴史の重みと神秘性を感じさせます。細部にまで彫り込まれた文様は見応えがあり、バリ島の芸術的な側面にも触れることができます。
鬼神像
境内の入り口や要所に立つ鬼神像は、悪霊や邪気を追い払う守護の役割を担っています。迫力ある表情や力強い姿勢が特徴で、時にユーモラスに見えるものもあり、その造形美には圧倒されます。これらの像はすべて手彫りで、一体ごとに異なる個性を持っているのも魅力のひとつです。
鬼神像には、バリ・ヒンドゥーの世界観や死生観が色濃く反映されており、単なる装飾ではなく精神的な意味を持っています。観光客にとっては写真スポットとしても人気で、バリ文化の深さに触れることができる存在です。
ジャガッナタ寺院のベストシーズン
ジャガッナタ寺院は一年を通じて訪れることができますが、気候や宗教行事によってその魅力の感じ方が変わります。特に乾季の4月〜5月や、祭礼が行われる時期は、寺院の魅力をより深く味わえる絶好のタイミングです。訪れる時期によって異なる表情を楽しめるのも、この場所の魅力です。

乾季(4月~5月)
4月から5月にかけての乾季は、バリ島観光のハイシーズン直前で、天候も安定しており、気温も過ごしやすい時期です。日中の気温はおよそ28~30度で、湿度も低く、清々しい空気の中で寺院の散策が楽しめます。強い日差しの下でもジャガッナタ寺院の石造りの建築がくっきりと浮かび上がり、写真撮影にもおすすめです。
また観光客のピーク前なので、比較的静かに寺院内を巡ることができ、落ち着いた雰囲気の中で祈りや歴史に触れることができます。寺院の周辺を含めてゆっくり散策できるため、初めての訪問にもおすすめです。
雨季(11月~3月)
雨季のバリ島は毎日のようにスコールが降るものの、気温は平均して26~29度と温暖で、緑が美しく映える時期でもあります。雨の合間には澄んだ空が広がることも多く、湿った空気の中で見る寺院の景観は、どこか幻想的な趣があります。
とくに雨に濡れた石塔や苔むした装飾がしっとりと輝き、普段とは異なる静けさを楽しめるのがこの時期の魅力です。観光客も比較的少なく、ゆったりと寺院を堪能できる点も嬉しいポイントです。
ガルンガンとクニンガン
バリ・ヒンドゥー最大の宗教行事である「ガルンガン」と「クニンガン」は、祖先の霊を迎える大切な時期で、40日周期で訪れます。この期間中、ジャガッナタ寺院も華やかな装飾に包まれ、ペンジョール(竹飾り)が道に並び、神聖でありながら祝祭感に満ちた空気が漂います。
特にガルンガンの初日とクニンガン最終日には多くの現地住民が正装して寺院を訪れ、供物を捧げ、祈りを捧げます。観光客もその文化的な雰囲気を間近で感じることができ、この時期にしか味わえない、特別なバリの魅力を体験できます。
ジャガッナタ寺院への行き方
ジャガッナタ寺院はデンパサール市の中心にあり、さまざまな手段でアクセスできます。滞在エリアや予算、旅行のスタイルに応じて移動手段を選べば、ストレスなく訪れることができます。それぞれの移動方法には異なる魅力があり、バリ島旅行の楽しみ方も広がります。


タクシー
バリ島ではタクシーを使ってジャガッナタ寺院に向かうのが最も手軽な手段のひとつです。とくにクタやスミニャック、サヌールといった主要リゾート地からであれば、片道30分~40分ほどで到着します。料金はエリアにもよりますが、100,000ルピア前後(約1,000円)です。
安心して利用したい場合は、ブルーバードタクシーなどのメーター制タクシーを利用するのがおすすめです。エアコン完備で快適なうえ、運転手が観光地に慣れていることも多く、言葉の不安がある方でも安心です。

カーチャーター
観光を兼ねて移動したい方には、ドライバー付きのカーチャーターがおすすめです。1日チャーターでおよそ600,000~800,000ルピア(約6,000~8,000円)が相場で、数カ所の観光スポットを効率よく巡ることができます。ジャガッナタ寺院の後に、バリ博物館や市場なども訪れたい場合におすすめです。
日本語対応のドライバーを指名できるサービスもあり、現地の文化や歴史について説明してくれることも。快適さと自由度を両立させたい方にぴったりの移動手段です。

バイク
ローカルな気分を味わいたい方には、レンタルバイクでの移動も魅力的です。レンタル料は1日あたり60,000~80,000ルピア(約600~800円)程度と手頃で、デンパサール市内であれば渋滞を避けてスムーズにアクセスできます。細い道も自由に進めるため、バリ島の暮らしを身近に感じることができます。
ただし交通ルールや運転マナーに不安がある場合は注意が必要です。ヘルメット着用は義務となっており、免許も国際免許証またはバリ島用の認可が必要です。
ツアー
初めてバリ島を訪れる方や、効率よく観光を楽しみたい方には現地発のツアー参加もおすすめです。ジャガッナタ寺院を含む市内観光ツアーは多数あり、半日で複数のスポットを巡るプランが人気です。料金はガイド付きで一人当たり500,000ルピア前後(約5,000円)から。
文化や歴史に詳しいガイドの解説を聞きながら寺院を見学できるため、深い理解と感動が得られます。移動の手間が省けるのも魅力で、短期滞在の方にも向いています。
ジャガッナタ寺院持ち物3つ
ジャガッナタ寺院を訪れる際は、神聖な場所ならではのマナーや現地の気候に配慮した持ち物を用意しておくと安心です。観光を快適に、そして気持ちよく楽しむためにも、以下の3つはぜひ持参しておきたいアイテムです。

サロン(腰布)
バリ島の寺院では、宗教的な礼儀としてサロン(腰布)の着用が必須とされています。特に膝上の服装や短パンでは入場できないこともあります。サロンは寺院の入口で貸し出しがある場合もありますが、観光シーズンや混雑時は数が足りないことも。
軽くてかさばらないので、自分で用意しておくと安心です。現地の市場や土産店では色とりどりのサロンが売られており、記念にもなります。写真映えもするため、おしゃれを楽しみながら文化を尊重する旅ができます。
飲み物
デンパサールは年間を通して気温が高く、特に日中は30度を超える日も珍しくありません。ジャガッナタ寺院は屋外が多く、日差しの下を歩くことも多いため、水分補給は必須です。ペットボトルの水を持ち歩けば、こまめに水分をとることができ、熱中症対策にもなります。
周辺にも売店はありますが、観光地価格で割高になることもあるため、あらかじめ準備しておくと経済的です。移動の車内でも役立ちますので、一本は常に持っておくと便利です。
帽子や日傘
晴天の日が多いバリ島では、直射日光を防ぐための帽子や日傘があると快適に観光が楽しめます。特にジャガッナタ寺院のような屋外施設では、日陰が少ない場所もあるため、頭部を守るアイテムは重宝します。
つばの広い帽子や折りたたみ式の日傘は、荷物にならず旅行にぴったり。日差しを防ぐだけでなく、紫外線対策としても効果的です。女性の方は、現地の雰囲気に合わせて、バリ風のデザインを選べばコーディネートのアクセントにもなります。
ジャガッナタ寺院注意点3つ
神聖な場所であるジャガッナタ寺院を訪れる際には、持ち物だけでなく、マナーや現地のルールにも注意が必要です。信仰の場として大切にされているからこそ、観光客としての振る舞いにも配慮しましょう。以下の3つは特に気を付けておきたいポイントです。
肌の露出が多い服装は避ける
ジャガッナタ寺院は宗教的な聖地であり、訪れる際には服装のマナーを守る必要があります。肩や膝が露出した服装は不適切とされており、特に女性のタンクトップやショートパンツは避けるべきです。肌の露出が多いと、入場を断られる場合もありますし、現地の人々の信仰心を損ねる行為にもなりかねません。
観光地であると同時に祈りの場であることを意識し、なるべく露出の少ない、ゆったりとした服を選びましょう。心地よく観光を楽しむための基本的なエチケットです。
写真撮影のルールを守る
寺院内では写真撮影が可能なエリアと、禁止されている神聖なエリアがあります。特に供物が捧げられている祭壇や、儀式が行われている最中の撮影は控えるべきです。無断でシャッターを切ると、現地の人々の感情を傷つけてしまう恐れがあります。
また、神像や供物の真正面からの撮影も不敬とされることがあるため、被写体や角度には注意が必要です。撮影を楽しむ前に、まず周囲の雰囲気をよく観察し、必要であれば現地のスタッフや案内板で確認しましょう。
入れない人
バリ・ヒンドゥー教の教えでは、「寺院は常に清らかな状態を保つべき場所」とされており、心身の状態が「不浄」とみなされる期間には入場を控えるよう求められています。そのため、女性の生理期間中は寺院への立ち入りができません。これは差別ではなく、宗教的な伝統と価値観に基づいた考え方です。
現地では広く受け入れられており、寺院の入口に注意書きが掲示されていることもあります。トラブルを避けるためにも、スケジュールは体調に合わせて柔軟に調整するのが安心です。
ジャガッナタ寺院周辺の観光スポット
ジャガッナタ寺院のあるデンパサール周辺には、文化・自然・歴史を感じられるスポットが点在しています。寺院を訪れた後に立ち寄りやすい場所ばかりなので、1日で充実したバリ体験ができます。移動もスムーズで、観光ルートとして組み込みやすいのが魅力です。
バリ博物館
ジャガッナタ寺院に隣接するバリ博物館は、バリ島の歴史と文化を学ぶにはうってつけのスポットです。館内には伝統的な衣装や楽器、儀式用具、古代の彫刻などが展示されており、バリ文化の多様性と奥深さを感じることができます。
建物自体も伝統的な建築様式で造られており、観るだけでも価値があります。ジャガッナタ寺院の信仰的側面に触れた後、博物館でその背景となる歴史や生活文化を知ることで、より深くバリを理解できるおすすめの組み合わせです。
サヌールビーチ

寺院から車で約20分の場所にあるサヌールビーチは、静かで落ち着いた雰囲気が魅力の海岸です。観光客でにぎわうクタやスミニャックに比べて人が少なく、のんびりと過ごすのにぴったり。
ビーチ沿いには散策道が整備されており、海風を感じながらゆっくり歩けるのも魅力です。寺院で精神的な静けさを感じた後、自然の中でリラックスできるこのビーチは、バリ島の穏やかな一面を味わえる絶好のスポットです。


バジャラ・サンディ記念碑
デンパサールの中心に位置するバジャラ・サンディ記念碑は、バリ島の独立とその歴史を象徴するモニュメントです。ユニークな建築デザインが目を引き、内部にはバリ島の過去から現代までを紹介する展示が多数並んでいます。塔の最上部には展望スペースがあり、市街地を一望できるのも見逃せないポイントです。
ジャガッナタ寺院で宗教的な側面に触れたあと、ここでバリの近代史を学ぶことで、文化と歴史のバランスがとれた一日を過ごせます。アクセスも良好で、立ち寄りやすい観光地です。
ジャガッナタ寺院基本情報
- 名称(日本語/インドネシア語)
ジャガッナタ寺院(Pura Jagatnatha) - 住所(目安)
Jl. Mayor Wisnu, Dangin Puri, Denpasar Timur, Kota Denpasar, Bali, Indonesia - 拝観時間
7:00~18:00 - 拝観料
基本的に無料(寄付金・お布施を求められる場合あり) - Googleマップ