バロンダンスはバリの伝統舞踊の一つで、ドラマチックな表現と迫力のある仮面衣装が特徴的なダンスです。
本来は神事の一部として行われてきたバロンダンスですが、現在は、観光客向けにわかりやすくアレンジされたバージョンが公開されています。
バリ伝統の芸術の一つとして、ぜひ鑑賞したいバロンダンス。今回は、バロンダンスの見どころや鑑賞できる場所、楽しみ方についてまとめてみました。
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バリ島のバロンダンスとは
バリ島観光でも人気のバロンダンスは、バイタリティあふれる印象的な舞踊です。バリ島の伝統芸能として、鑑賞する者に喜びを与えてくれます。
バロンダンスはもともと、神様を喜ばせることにより平穏な暮らしをもたらすためのものとして誕生したといわれています。人間の生活や自然の原理に対する古代バリ人の理解を反映しているのです。
バロンダンスの魅力
バロンダンスではバロンとランダの戦いが描かれますが、獅子の姿をしたバロンは精霊の王で、「善」を象徴しています。一方のランダは、悪魔の女王であり、「悪」の象徴です。
バリ人の世界観が反映
バリヒンドゥーでは、人間はみな良い心と悪い心を持っていて、善悪の決着をつけることは不可能であるという思想があります。
バロンダンスにはその世界観が反映されているのです。
神聖な儀式の一部として発展
本来、バロンダンスはコミュニティで行われる神事の一部として催されていました。人々の生活を災いから守ってくれる神聖な舞踊だったのです。
今もなおいくつかの村では寺院での神事の際に行われています。最近では旅行者のためにアレンジされたバロンダンスが披露されるようになりました。
ドラマチックで見ごたえがある
バロンダンスの最大の見どころは、魔女の呪いにかけられた戦士がナイフを突き立てるシーンです。神事の一部として演じられるバロンダンスでは、戦士役のダンサーがトランス状態に入るといいます。
バロンダンスは午前中に行われることが多いですが、ウブドでは夜の公演が行われる曜日もあります。
バリ島のバロンダンスの歴史
バロンダンスの起源
バロンダンスは少なくとも11世紀には行われていたことがわかっており、10世紀に催されていたとする記録もあります。バリ舞踊の人気アトラクションとして、バリ島の複数の場所で鑑賞できますが、発祥はウブドのあるジャニャール地方です。
善の象徴であるバロンはライオンのようなの形をしており、これは唐代に中国から東南アジアに伝播した獅子に類似しています。一般的なバロンはふさふさとした白い頭毛とあご髭を持ち、金と皮で装飾された仮面をつけています。
神事に登場するバロンは、村によって獅子以外の姿をしていることもありますが、長い胴体を持つ動物であるとい共通点を持っています。
神事としてのバロンダンス
19世紀以前はジャワ島でも行われていたバロンダンスですが、現在のインドネシアにおいて、神聖な儀式として催されているのはバリ島だけです。
バロンダンスは寺院の境内で、ガムランが奏でる音楽に合わせて、複数のダンサーが踊るのが伝統的なスタイルです。物語はいくつかバリエーションがありますが、善と悪との戦いという点は共通しています。
観光客向けの公演
観光客向けに披露されるようになったのは1930年代に入ってからです。もともとのバロンダンスは3時間以上の長さがあるうえに、トランス状態になったダンサーのパフォーマンスが旅行者にとっては「不快な蛮行」に見えることもありました。
そのため、観光客用の短縮バージョンが作成され、トランス状態になるシーンが省かれた形で公演されるようになったのです。
バロンダンスの見どころ
バロンダンスのパフォーマンスは鮮烈な視覚体験を提供します。
鮮やかな色彩の衣装、精巧な人形、情熱的なダンス、そして鼓動のように心を打つ伝統的なガムラン音楽が組み合わさっています。これらの要素が一体となり、観客を深遠な物語へと引き込みます。
バロンダンスの見どころをチェックしておきましょう。
わかりやすいストーリー
バロンは獅子に似た神獣で、ランダは悪魔の女王です。バロンダンスは、善と悪という2つの勢力の戦いをモチーフにした舞踊で、演劇的な要素が比較的強いです。
物語は最終的にバロンがランダに勝利するところで終わります。善が悪に勝ち、観客は花をまき散らします。
バロンダンスには他にもいくつかのバリエーションがあり、バロンが完全な「善」でなかったり、ランダが英雄のように描写されることもあります。
観光客に公開されるバロンダンスはわかりやすい現代風にアレンジされているので、あらすじをすべて理解できなくても十分楽しむことができます。
仮面と衣装
バロンを演じるダンサーは8kgもの重さがある仮面をつけます。木製の仮面は複雑なデザインで装飾されており、迫力があります。
観客を巻き込む迫力
エネルギッシュでアクロバッチックなパフォーマンスも、バロンダンスの特徴です。
バロンダンスは、バロンとランダの戦いからはじまりますが、観客は手を叩いたり声を出したりして、いっしょに参加できるのもバロンダンスの楽しいところです。
ガムラン音楽の伴奏
背景の音楽は、ガムラン・オーケストラが担当します。バロンダンスにはガムランが欠かせません。
バリの伝統楽器であるガムランに合わせて演じるダンサーたちの動きはキレがあり迫力満点です。
クライマックスシーン
バロンダンス最大の見どころは、クライマックスの刀を刺すシーンでしょう。ランダを倒そうとする戦士たちがランダの魔法にかかって、自分たちを傷つけようとします。
最終的にはバロンのおかげで命拾いするあらすじです。このシーンではトランス状態になるのが伝統的バロンダンスですが、観光客向けバージョンではトランスは起こりません。
舞台終了後にはすべてのダンサーが集まり、記念撮影できます。
バロンダンスの流れ
バロンダンスはあらすじがわからなくても、ただ見ているだけで楽しめる劇場型ダンスです。でも話の展開をあらかじめ少し知っておくと、より深く鑑賞することができますよね。
実際にバロンダンスを見に行くと、次のような流れでストーリーが展開していきます。
バロン登場
最初にバロンが猿を伴って登場し、ユーモアたっぷりの舞踊を披露します。
女王の嘆き
クンティ女王が登場します。彼女の息子であるサハデワ王子が、死神の生け贄にされると告げられ嘆く女王。
女王と王子に忠実な大臣がいっしょに嘆きを表現しますが、後ろに潜んでいた魔女に呪いをかけられてしまいます。
はりつけのサハデワ王子
呪いをかけられた大臣は、魔女のいいなりになり、サハデワ王子を誘拐します。王子は死神の森で木に縛りつけられてしまいます。
シヴァ神登場
そこにシヴァ神が現れます。サハデワ王子を気の毒に思ったシヴァ神は彼に不死の力を与えるのでした。
死神を天国へ送る
死神がやってきて王子を殺そうとします。ところが、シヴァ神のおかげで不死身になった王子は死にません。
無力な死神は王子に自分を昇天させてほしいと頼みます。王子は死神の願い通り、死神を天国へ送ったのでした。
カレカがランダに変身
死神の弟のカレカも天国へ送ってほしいといいますが、王子は拒絶します。悲しみと怒りのあまり、カレカは巨大な動物や鳥に変身し、ついにランダになってしまいます。
バロンとランダとの戦い
一方の王子もバロンに変身し、ランダとの戦いがはじまります。 戦士たちも王子とともにランダを倒そうとしますが、逆に呪いをかけられてしまい、自分に剣を突き立てるのです。
バリ島でバロンダンスを鑑賞できる場所
バロンダンスはバリ島の多くの場所で観ることができますが、特にウブドやデンパサールの劇場では定期的に公演が行われています。
パフォーマンスは通常、朝または夕方に開催され、約1時間から1時間半続きます。観覧の際、ストーリーの解説書を事前に入手しておくと理解を深めることができます。
バリ島でバロンダンスが鑑賞できる場所を紹介しておきます。ただし、曜日や時間、演目は変更されることも多いので、最新情報は現地でチェックしてからお出かけください。
「【プロ厳選】バリ島のおすすめ観光地19選!絶対に行きたいスポットを解説」にて人気の観光スポットを紹介しています。
ウブド王宮
ウブドの中心に位置するこの宮殿は、バロンダンスの上演で知られています。美しい庭園と古代の建築を背景に、夜間にパフォーマンスが行われます。毎週水曜と金曜の午後7時半から、さまざまなバリ舞踊が披露され、バロンダンスも鑑賞できます。
入場料は一人100,000ルピアで、ウブド王宮のチケット売り場で購入できます。開幕する30分前に入場するのがおすすめです。屋内ステージがあるため、雨の日でもリラックスしてバロンダンスを鑑賞できます。
バトゥブラン村
ジャニャール州スカワティにあるバトゥブラン村はバロンダンスの発祥地ともいわれており、毎日朝のパフォーマンスが行われています。伝統的なコスチュームと音楽が、ダンスの神聖さを一層引き立てます。
デンパサールとウブドを結ぶ道路沿いにあり、ウブドからは車で30分ほどの距離です。バトブラン村にはステージが5つあり、それぞれがバリ伝統建築様式で建てられています。
バロンダンスの公演は、毎日午前9時半からで入場料はRp150,000です。現地で購入できますが、オンラインで買うと少し安くなります。
サハデワバロンダンス劇場
デンパサールに位置するこの劇場では、バロンダンスのエキスパートによる上演が行われます。照明と音響の設備が整っており、視覚的にも感動的な体験が期待できます。
ガルーダ・ウィスヌ・ケンチャナ(GWK)文化公園
ガルーダ・ウィスヌ・ケンチャナ文化公園でもバロンダンスが行われています。公演は毎日午後3時からです。バロンダンス鑑賞は無料ですが入園するのは有料です。
入園券は大人一人100,000ルピア、子ども80,000ルピアで、オンラインでも購入可能です。ガルーダ・ウィスヌ・ケンチャナ公園は、バロンダンス以外の見どころも多いので、公園内の見学もあわせて行うのがおすすめです。
アルマ美術館&リゾート
ウブドの中心に立地するアルマ美術館&リゾートは、インドネシアや西洋アーティストの作品を展示しています。ここのオープンステージでバロンダンスが鑑賞できます。
公演は毎週日曜日の午後7時から行われています。
まとめ
バリ島のバロンダンスは、単なるエンターテイメントを超えた深遠な意味を持つ文化的な表現です。その豊かな歴史、象徴性、鮮烈なパフォーマンスは、観客に独特の視覚と精神的な体験を提供します。
バリ島を訪れた際には、ぜひこの魔法のようなパフォーマンスを体験して、バリ島の文化の深層を探求してみてください。
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